真崎ですよ

ライターの真崎です。2016年6月より池袋→沖縄に移住しました。

お金と信念のライフカード ~とあるおじさまとの攻防戦~

 

大学5年生の夏から卒業まで「リラクゼーションセラピスト」という聞きなれない職種のバイトに従事していた。

 

その時のお話。

 

 

 

4年間続けていたダイソーの販売員バイトを春に辞めてからしばらく収入なしで2度目の就活を続けていたらまあお金はなくなった。面接のために大阪に行く交通費すらなくなって不安から部屋に三角座りしてしくしくしていた私は新たなバイトを探すことに。

 

 

「バイト 関西 高給 日払い」

 

検索

 

 

 

結果

 

パチンコ

キャバクラ

パチンコ

パチンコ

キャバクラ

パチンコ

パチンコ

パチンコ

 

 

 

源氏名はなにがいい?」

 

「(源氏名ってなんや)なんでもいいです。」

 

「じゃあ「星野あおい」で。」

 

 

 

キャバクラは体験ぽっきり。

 

 

その後ついにお金が底を尽きそうになっていよいよ親のすねに歯形をつけかけたその時、たまたま求人サイトで目に入ったのが「リラクゼーションセラピスト」のバイト。

 

完全歩合制。

お客さんひとりあたりで4割バック。

一番安い90分1万円の施術で4000円。

日払い可能。

 

 

「これしかない」と思って即応募。

 

即採用。

即戦力真崎。

 

 

 

 

 

いろいろなプロセスを省いて結果から伝えると、かなりグレーなバイトだった。

 

 

リラクゼーションセラピストということで、オイルを使ってリンパを流す施術を行うものだったのだけど

 

 

「対象はおじさんね^^」

 

女店長に言われて衝撃。

そんなこと聞いていない。

 

 

 

源氏名は、真崎だから……マキちゃん!^^!」

 

セラピストで源氏名

いよいよ怪しい。

 

 

 

 

施術内容は、下着を着けてもらいバスタオルを被せたおじさまの全身をオイルマッサージしていくというもの。場所はマンションの個室。嫌な予感に拍車。

 

施術前の同意書らしきものには「セラピストに卑猥な行為を強要しない」みたいなルール。嫌な予感に太鼓判。

 

 

ここ関西。見方によれば軽くフリ。

 

ダチョウ倶楽部の「押すなよ絶対押すなよ」っていう竜ちゃんの言葉が「セラピストに卑猥な行為を強要するなよ絶対するなよ」的にも受け取れるわけで

 

案の定おじさま達は肥後克広と寺門ジモン。

 

竜ちゃんを押す勢いで強要してくる卑猥な行為。

 

お客様層の比率を表すなら

「健全:変態=8:2」くらい。

 健全な人の方が多いけど2割は変態。

 

そんなグレーな職場と仕事内容で、神様に誓ってひたすらホワイトにバイトをし続けたセラピスト真崎。

「流されるものか」と気を張る私が2割のおじさま達に向ける態度は無駄に体育会系。

 

「ねえマキちゃん……」

「無理っす。なしっす。そういうのやってないっす(低音)」

 

「ちょっとs「それサービス外っす(無味乾燥)」

 

 

そんな可愛げの欠片もない感じだったけど、元来マッサージ好きだったためその腕だけは店長もお客さんも公認のものとなり、ピュア&ノンピュアなおじさま達からも指名を取れるように。

 

仲良くなったおじさま曰く、真崎はノン卑猥&本気マッサージ、その他女子は半端マッサージ&多少オプションサービスみたいな感じなのが店の実情だったらしく、最後まで空気を読まずに真面目を貫いた私は、他の女の子たちがお店HPのセラピスト紹介で「おっとり癒し系のセラピストです♡」「お姉さま的な美人セラピストです♡」と書かれている中で「マキちゃん:手の皮が厚くマッサージ上手なセラピストです」とのご紹介。

この複雑な気持ちはなんだろう。

嫌われる勇気。

 

 

来店するおじさま達の多くが社長や会社の重役。

要はわりとお金持ってる人が多い。

 

お金を持て余した肥後克広もとい寺門ジモンは、妙な行為の強要の際にお金をちらつかせてくることが多々あった。

要は「5千円あげるからお願い」的なもの。

 

当時お金には困っていたけどあくまでホワイトを貫きたかった私は、お金によってその信念を曲げる気にはならず、そういった申し出も断り続けた。

お金をもらってその要求をのむという事を1度でもやってしまったら、私は私を信じることができなくなってしまいそうで怖かった記憶もある。 

 

 

 

 

 

 

あの日のことは

今でも鮮明に覚えている。

 

 

 

来店したのは、医者のおじさま。

 

私は初めてだったけど、リピーターさんということは分かっており、顧客情報から相当お金を持っていることも分かっていた。

 

そして「注意が必要」という情報も。

 

 

 

 

「ねぇ……」

 

きた。

 

 

 

「だめかな」

 

だめです。

 

 

いつも通り無理だとあしらおうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理っs「お願い、10万で」

 

 

 

 

 

 

 

 

「無理っす」が、つまった。

 

あれ。真崎。あれ。

 

 

 

 

 

 

10万、かあ。

 

 

 

ダイソーで働いていた時は、1日8時間勤務を週4~5日続けたりしていて、それで1か月間でようやく稼げる金額が大体10万円くらいだった。

 

要は当時の私にとっては非常に大金。

 

 

 

それが、この数分で。

 

 

  

 

脳内でなにかが高速回転。

 

悪魔がささやく。すごい早口で。

 

 

「10万。10万やで。自分いまお金困ってるやん。今の仕事やったら多めにお客さん来ても1日1~2万が限度やん。それがここで「YES」言うだけで10万やで。いやもちろん嫌やで。嫌な気持ちは分かるで。そんなんしたないしそもそもしたことないし余計嫌なん分かるで。信念あるんも分かるで。あくまでホワイトに仕事したい純粋にマッサージだけで貢献したい気持ちすごい分かるで。でもそのプライドここでいる?ほんまにいるんか?どっちの方が自分の利益になるんか冷静に考えたか?

 

お金、大事やで。

 

ここは。10万とっときや。な。

これも1つの経験やで。いつかネタになんで。な。」

 

 

 

確かにな。一理あるわ悪魔。

 

人生っていろいろ経験した方が価値観も広がるし語れることも増えるし、たとえこれが間違った選択やったとしてもいつかネタとして笑い飛ばせるやんな。しかもそれで今お金が手に入ったらバイトのシフト減らして自由な時間増えるんやし時間買ったと思えばええやんな。残り少ない大学生活を多少なりともより有意義に過ごす権利をお金で買ったと思えばええやんな。

 

・ 

 

 

悪魔と真崎の脳内会議、ここまで5秒。

 

人心掌握に長けた悪魔の力でダークサイトに堕ちかけの真崎。

 

 

 

目の前に差し出された【10万】【信念】のライフカード

 

「どうする真崎」状態の真崎@オダギリが【10万】のカードに手を伸ばしかけた

 

 

 

 

 

その時

 

ここに来て、天使。

 

 

 

 

黙って私の方を見てる。

 

すでにちょっと気まずい。

 

 

 

天使は語らない。

 

 

その代わりに、私の脳内である映像を流し始めた。

 

 

 

 

**********

 

 

"真崎、勉強おしえてくれてありがとう"

 

 

"京都や京都!おこしやすって言うてや!"

 

 

"将来保育士さんなりたいんやけど、アホやし無理やんな"

 

 

"これ解けたで!わたし天才やろ!"

 

 

"そういうのやめろや。鬱陶しいねん"

 

 

"高校行ったら留学すんねん。ええやろ"

 

 

"真崎に礼言いたいから電話貸して"

 

 

***********

 

 

 

 

大学4年生の時に、NPOのボランティアで関わっていた中学生たちの姿と声。

 

私が今まで出会ったことのない派手な見た目の中学生たちで、口は悪いわ私のこと無視してくるわ悪態ついてくるわで私の頭を毎週がんがんに痛めてくれた生徒たち。

 

彼らの指導で自分がなにを残せたのだろうと後になってもずっと心残りだったのだけど、問題が解けたときの顔、突然語ってくれた夢、思いがけず見せてくれる仲間想いな姿、将来投げやりになってると見せかけて受験合格した時あいつボロ泣きしてたでっていう仲間からの報告、彼らが私の中に残してくれたものは数知れず計り知れない。

 

 

 

そんな生徒たちの姿を、淡々と上映する天使。

 

饒舌な悪魔よりも、私にとっては100億倍説得力のある手段。

 

 

 

 

 

あかんわ。

 

 

ここで10万のオプションサービス選んだら、私はこの生徒たちに顔向けできなくなる。

 

 

教育者として、とかかっこいいもんじゃなくて。なんかもう、いろいろアウト。

 

今なによりも避けたのは、なにより嫌なんは、それやわ。

 

 

 

 

 

 

「無理っす。そういうのやってないっす。」

 

 

【信念】のライフカードを引いた。

 

 

 

「だめ?」

「だめっす」

 

「もっと出そうか?」

「いいっす」

 

「他の子はOKしてくれたよ?」

「私は無理っす」

 

「もっと出そうか?」

「いいっす(これ以上そこで押されると若干揺らぐのでやめてっす)」

 

「いくらならいい?」

「じゃあ1億」

「…」

 

 

 

 

そんなやり取りの末、おじさまは諦めた。

 

そして私は最後まで淡々と施術をした。

  

 

 

そして施術が終わって帰り際。

 

施術前にお会計を終えていたのに財布を取り出すおじさま。

 

 

 

「ありがとう。気持ち良かったよ。無理言ってごめんね。」

 

 

手渡された諭吉が1枚。

 

おじさまは薄い微笑を顔に貼り付けて帰っていった。

 

 

チップは店長にご報告。

その経緯を話したら「ボーナス」と言われそのまま受け取ることに。

 

 

 

 

 

この出来事は、今も私の中に強烈に焼き付いている。

 

 

あの時もし【10万】のライフカードを引いていたら。

 

そこから2年間あまりの期間私が教育や子どもに関わることはもしかしたらなかったんじゃないかと思う。大げさな話ではなく。真面目なんす。

 

 

ありがとう天使。

 

万が一「じゃ1億で」の展開になっていたらということは、もう考えなくてもいいよね天使。(うわずり声)