真崎。25歳。今年26歳。
仕事中に本気の嗚咽号泣。
前回の記事からわたしを心配して下さる声も届いてる中でこんなことを書いてしまうと、その方々が「んまあ!」ってなりそうなんだけど
つまり、とらぶった。
それとなくなんとなく働けてきていたわけなんだけど、ちょっと初めてでどうしようってな感じのことが起きた。
3人組のお客さん。いらっしゃい。
もう見るからに、1人が偉い。
まあ予想するに「お前ら今夜は俺のおごりじゃついてこいや!!」「「ハイっ!!」」的な感じで流れ込んできたんだろう。部下の態度が従順。すでに5~6件はしごしてきたらしい。
私がついたのが、お偉いさんの横。
アルコールのかほり。
こういう仕事なのでやっぱり変な人もいるし、私のいるお店ではがっちり禁止されている「おさわり」的なことをしようとしてくる人ももちろんいる訳で。サンプラザ中野(に似てた)ももれなくそのひとり。
最初は「お腹ぷにぷに~」とか言うて私のへそまわりの肉を服の上からぷにぷにしてて(それはそれで違うダメージ)、それが段々とエスカレートしてくる。よくある流れ。
度が過ぎればボーイさんが止める。
ただ全部を全部防げるわけでもないので、キャストが自分の裁量で「あかんよー」と注意したり防御態勢に入ることが許されている。
セラピスト時代に仲の良かったお客さんのエロ社長から「今から「3秒で分かるビッチテスト」をやるぞ」と言われて突如それをされたのだけど、0.5秒で「鉄の女」という結果が出た。
え、逆に不名誉。
そんな私なのだけど、別にふとももに手置かれたりお腹さわられたり、それらの手が前後1~2cmくらいさわさわと可動範囲を広げたところで正直あんまり気にしないから放置してる。
で、「きしょ!」と思ったら止める。
(明確な基準)
それで大体事なきを得てきたし、私自身それで大して嫌な想いをしたこともなければ、それでお客さんが怒ったり興ざめしたりしたことも今のところない。
で、今日もそんな感じでいこうとした。
明らかに度を越えてこようとするサンプラザ。
真崎@鉄の女が途中から決死のディフェンス。
したら
「つまらん。」
さっきまでベロベロデレデレな感じでオフェンスに徹していたサンプラザから、ふっと熱が引いて、そこから私に背を向けてその後はずっと携帯をいじっていた。
従順系部下2人とキャストさんはカラオケを楽しんでいる。
さあどうしたこの状況。
「はい、終わり。帰るぞ。」
突如、サンプラザ起立。
部下もちょっとうろたえながらも「はっはい!!」と、従順。
そしたら、もう一度サンプラザ着席。
そして言い放った。
「この店は間違えた。最初に俺につける女を。」
強調された。私への不満を。(倒置法)
その人たちはどうやら同業者だったらしく、この店での私含めキャストの接客が「いかに駄目だったか」ということを部下に「これも勉強やと思ってよく覚えとけ」と事細かに説明を始めた。「このシラフ共に俺らの相手は無理や」と。
サンプラザは、この界隈でいわゆる「上客」らしい。
要は「お金を持っている人」。
私たちのお店に来る前にはしごしてきた3件の話をしていたのだけど、その各店で10万円ずつ遊んできたらしい。この店では1万円と少し。
私の方を向く。
「この子が俺の要求を拒否したことで、この店は10万売上が出たところを大幅に損した。」
「別にきみのことが嫌いとか悪いと言ってるんじゃなくて、君らの仕事は「客がなにを求めているのかを察して楽しませること」だからね。君は俺を楽しませられなかった。」
「俺がこれをした時に君がこう返すのが正解で、そしたら俺は君にドリンクを出したしシャンパンだって開けたかもしれない。」
お前らもよく覚えとけ。
遊び方といのはな。
こういう店の女というのはな。
いかに金を落とさせるかというのはな。
ハイッ!!
ハイッ!!
ハイッ!!
ありがとうございます!!
よく勉強します!!
目の前で、延々と続く説教と講釈。
チェックの時間ですけどサンプラザ。
って、私の精神状態は、その時すでに危うかった。
"この子が俺の要求を拒否したことで、この店は10万売上が出たところを大幅に損した。"
この言葉が頭にぐるぐると駆け巡っている。
働き始めて1週間半。
この時期は仕事に慣れることが最優先事項ってことは心得ているつもりだけど、他の子たちが指名やドリンク注文、お客さんを楽しませて時間延長をとってる姿を見ると、正直焦る。
「私だけ役に立てていないのでは」
どこかでそんな想いがあった。
そもそも「女」という面で元来そこまで自信がないのにこういう仕事に手を出したわけで、のっけから若干劣等感もある。
意識してなかったので潜在的なものだったのかと思うけど。
それが、出てきた。
隣では、まだサンプラザが雄弁に語ってる。
その時、私の頭の中では「いろんな私」が好き勝手発言しまくっていた。
「私のせいでお店に損失を出した」
真面目な私。
「え、いや「おさわり禁止」のルールですやんか」
正当性を唱える私。
「こういうことからも学ばなければ」
成長に焦る私。
「私のせいでお店に損失を出した」
真面目な私。
「じゃあ私はあのままさわられとけば良かったのか」
結論を誤る私。
「言うてお客さんおらな成り立たん商売やで」
妙なプロ意識出してくる私。
「部下に対してこんな偉そうに長々と講釈たれてどっか悦ってるクソみたいな大人にはなりたくない」
中2な私。
「そうやって思うのが私のあかんとこか」
反省の私。
「私のせいでお店に損失を出した」
真面目な私。
「すごいトイレ行きたい」
我慢してた私。
「これ他のキャストもボーイも支配人も聞いてるやん」
他者からの目が気になる私。
「私のせいでお店に損失を出した」
真面目な私。
「私のせいでお店に損失を出した」
真面目な私。
「私のせいでお店に損失を出した」
真面目で自責感情強めの私。
「あ、やばい、これ泣く」
限界の私。
ここで泣いたらまたややこしいので、その空間から自分の意識を離した。聴覚をBGMに集中させ、焦点を遠くにあててぼやかす。
なんとかしのげ、私。
いったい何分続いたのかという悦っ気たっぷりの説教が終了し、エレベーターに乗り込むその3人に支配人がついていき「すいませんね」と謝っていた。
エレベーターが閉まった瞬間にひとりの女の子が大声で
「気にすることないですよ真崎ちゃん!!!!!」
絶対その人に聞こえる声で励ましてくれた。
接客のプロとしてどうなのと言われる行動かもしれないけど、私よりも感情的にそのお客さんに怒ってくれているその子を見て少し救われた。
私がこの店で働けるのはキャストがこぞっていい人達だから。
その時私がその子に向けたのは、たぶん笑顔だった
と、思う
んだけど
あれだけいろんな思考が駆け巡っていた状況。
次に口を開いた時、自分がなにを話したいのか、自分でも分からなかった。
その結果、言葉の代わりに嗚咽が漏れた。
それを皮切りに涙腺決壊。
壊れたsiriみたいになった私が途切れ途切れに発していた言葉は
たぶん
「ごめんなさい」
「売上」
やっぱそこだった。
キャストの子たちは「全然気にすることない」「悪いことしてないじゃん」「完全にあっちが言ってることがおかしいよ」と口々に励ましてくれて、今冷静になればその言葉を冷静に受け取れる自分がいるのだけど
"でも、あの時、自分がもっとうまくやれていれば、お店はもっと売上を出すことができたのに"
私の頭の中はそれでいっぱい。
罪悪感と自責感情で自分の中が支配されていくのを感じる。
支配人が戻ってくる。
慰めてくれている女の子たちの輪をダッシュで抜けて、支配人の元へ行く。
「ごめんなさい」
謝る。
支配人、私をチラ見して、視線を戻す。
のち、猛スピードで二度見。
「ま、真崎、どうした!?なんで泣いてる!?」
そこからたぶん「売上」的なことをつぶやいていたと思うのだけど、言葉にしようとすると嗚咽がこみ上げてきて、途中から息がしにくくなって上手く話せなくなってきた。
ヒッヒッとしゃくりあげ、うまく身体に酸素が行きわたらなくなっているのか、頭がクラクラしてきて両手が痺れる感覚に襲われた。
支配人が「とにかく落ち着け真崎!座れ!ゆっくり息しろ!」みたいな感じで声かけてくれてて、なんかよく分からんなりに頑張ってラマーズ法的な呼吸してた気がする。
ヒッヒッがヒーヒー(フー)のリズムでスローダウン。
そしてどこかのタイミングで落ち着いた。
**************
この泣き方。
1年に1回くらいやってる気がする。
よく泣く私だけどこのレベルは稀。(ほんと)
最後はたぶん去年の春頃だったと思う。
今日の仕事が終わってからも今日のこの出来事が頭をぐるぐるしていて、そこから付随していろんな思考と感情が入り乱れて、渋谷の街で勝手に息苦しくなっていた。
ブログを打ちながら、冷静に「なんでだろう」と考える。
この出来事が火種で、なにかが思い出される感覚があった。
分かった。
あれだ。
2年間の社会人生活の中で、2~3回くらいこの泣き方をした時があって、実はその時のことが頭の片隅にしっかり焼き付いていて、その時の状況も一緒に思い出せる。
共通点があった。
「これをやりたくない」
と、本気でこころが叫んでいる時。
「でも、お金をもらっている以上やらなくてはいけない」
と、理性がこころに叱責をする時。
どうしても納得できず売りたくない商品があった。
どうしてもここで文章を書くことをしたくなかった。
それでも割り切って売れちゃう人は売れちゃうし、文章なんてその時はクオリティ求められているわけではなかったから適当に書いてしまえばそれ良い。
でも私には、それができなかった。
器用でもないのに「自分が納得しないと身体が動かない」なんて言って行動しない私はやっぱり社会不適合だと思った。
それで結局動けなくてやらない、その割には頭の中の「社会適合の私」がずっと責め立ててくる。「仕事だよ」「お金もらってるんだよ」「自分の意思とは関係なく私には報酬の対価として労働力を提供しなければいけない責任があるんだよ」学級委員か。
やれ、動け、働け。
無理、嫌だ、やりたくない。
義務、責任、まずはやれ。
動けない私の身体の中でそんな二項対立が起こっている。
この抗争が始まった時だと思う。
私が、例の泣き方をしているのは。(倒置法)
この抗争の末、私の中に占められる大部分が
「お金をもらっているのだから、その分の労働力、そして成果を提供しなければいけない」
になっていた。
1社目ではそれが顕著だった。
最初は志で繋がり一緒に教育をやっていこうとなったのだけど、互いの考えにズレが生じ始め、私が動かなくなりつつあった時、私は自分を責めながら「志の繋がり」が「お金の繋がり」に変わっていったんだと感じていた。
お金をもらっている。
だから、頑張らないといけない。
成果を出さなきゃいけない。
至極当たり前のことかもしれないのだけど、その考えで自分を突き動かすことのできなかった私。
そこに対して、実は猛烈に「罪悪感」があった。
その感覚はトラウマのように根強く私の中に巣食っている。
一度知り合いのカウンセラーの人と話している時に「私は頑張っていると言ってみて」と言われた時に、なんと、言えない。
言おうとしたら泣いた自分がいた。
頑張れない私、頑張っているつもりだけど成果を出せない私に対して、私自身が一番私にこんな声をかけていた。
「お前は頑張っていない」
「お前が悪い」
「お前が間違っている」
************
「お前は頑張っている」
「お前は悪くない」
「お前は間違っていない」
なおも涙が止まらない私に、支配人は真っ直ぐ伝えてくれた。
私が自分自身に対して実はまったくかけることができなかった3大テキストを、支配人が丸々下さった。
ここは、そういう店じゃないからな。
お前の接客は間違ってなかった。
あの人たちが合わなかっただけ。
この店の方針は分かっているだろ。
そういうのは駄目だっていうルールだ。
ちゃんとみんな分かっているから。
売上のことは気にするな。
この店に相応の料金をちゃんともらったんだ。
その接客を認めるとしたらこっちは時給を上げてやらなきゃいかん笑。
だから
よく頑張ったな。
お前は悪くない。
お前は間違っていない。
二度目の号泣。
支配人「えぇ!」てなってる。
すんません。
自分が自分をまだ丸々受け止めきれていないのは、表面的な状況が大きく変わった今も健在だと感じている。
受け止めきれないけど、本当はずっと欲しくてずっと誰かに言ってほしくてずっと自分自身に言ってあげたかった、3つの言葉。
思わぬ形で、もらった。
びっくりするぐらい、こころが軽くなった。
なんとまあ。
と、そんなことがありました。
ネット検索して最初に見つけたから連絡しただけの店なんだけど、思いがけずありがたい環境に来れたんだと今日感じた。
長くなったけど
つまりはまあ引き続き健全に頑張ります。