真崎ですよ

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台風と、停電と、特別警報と幽霊の冤罪【奈良・下北山村トライアル移住日記②】

 

8月23日(木)

台風20号がくる。

早朝に「本日『きなりの湯』が臨時休業です」という村内放送が聞こえた。寝ぼけていたわたしはその放送が夢か現実か分からず、誰かに電話をかけて「今日『きなりの湯』のレストランお休みって本当ですか??」と聞いたら、相手に「そんなことを聞いてくるな!!!」とブチ切れられてビックリした。「これはさすがに夢だ」と思ったらやっぱり夢だった。

すると『きなりの湯』館長から電話がかかってきて、「今日は臨時休業になったので、バイトもお休みです」と穏やかな声で教えてくれた。こっちは現実。下北山村には夢より優しい世界がある。

 

レストランがお休みになる代わりに、大きなスポーツ公園の宿泊施設で、厨房・食堂のお手伝いをすることになった。

この食堂でわたしは毎朝ごはんをいただいているのだけど、朝食中にスマホをさわっていたことなどで、食堂のスタッフさんに何度か注意されたことがあった。

「正直わたしに良い印象はないだろうな、大丈夫かな」と脆弱メンタルが顔を出して、バイト開始までの時間は胃をキリキリさせていた。

 

が、杞憂だった。

わたしに重ねて注意をしたパートさんは、仕事をしながら「どこから来たの?村は楽しい?」と話をふってくれ、安心しながらいろいろ話した。

「野生の猿を初めて見ました、めっちゃかわいかったです」と言ったら、「猿なんかかわいくないよ!シカもウサギもイタチもかわいくない、獣害がひどいからね」と、心底憎々しそうにお話していた。

 

空いた時間にボーっとしていたら、料理人さんが「ここ、特別警報出たよ」と教えにきてくれた。

特別警報って、警報よりヤバいやつでは。

そういえばさっきから暴風で窓がガタガタ鳴っているし、雨の音もザザザやシトシトではなくズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボである。

 

洪水や土砂崩れなど大丈夫かなとソワソワしたけど、料理人さんは「大丈夫だよ~」と笑った。心配しても仕方ないなと思って、とりあえず無心でたくさんたくさんお皿を洗った。

 

バイトを終え、お風呂に浸かり、部屋に戻ってテレビをつけた瞬間に停電した。心臓がヒュッとした。

 

本当になにも見えない。どんなに目を見開いても闇、闇、闇。このシチュエーション、完全にホラーものの大好物。

いま目の前に白装束の女がいても分からない。その図を想像してしまい、怖さすぎてパニックになり、ブルブルと壁をつたいながら部屋のドアまでたどり着く。

鍵を開けてドアを押す。開かない。

めちゃくちゃ押す。開かない。鍵をひねってもう一度押す。開かない。押す。開かない。タックルのように押す。開かない。マジで開かない。

幽霊だ。死んだ。

 

半泣きで這いながら部屋に戻り、手探りでなんとかスマホを見つけて懐中電灯をつけ、部屋の隅で三角座りしながら復旧を持つ。

5分ほどで電気がつき、安心して再びドアに向かう。

ドア、引いて開けるタイプだった。ごめん幽霊、完全に冤罪。

 

 

8月24日(金)

この日は台風も遠ざかり、レストランも通常営業だった。前回の出勤から少し日があいたので、若干ドキドキしながらバイト先に向かう。

 

お店に入ると、ちょうど館長と最年長のパートさんがいて「今ちょうど真崎さんの話をしていたんだよ」と話しかけてくれた。

どうやらパートさんが「真崎さんは女の子なんだから、宿舎のシャワーじゃかわいそう。お風呂のことはもっと気遣ってあげないと!!」みたいなことを言ってくださったらしい。それを受け、館長はわたしがいつでも温泉に入れるよう手配をしてくれた。

「温泉のスタッフにも伝えておきますから」と館長。「よかったね」とパートさん。なんだか猛烈にジーンときてしまった。

 

「真崎さん、下北山村はね、本当に人がいいんですよ。下北山村派遣でよかったと思います」

トライアル移住初日に、奈良県庁の方がおっしゃっていたことを思い出す。滞在10日目、今のところこの言葉には150%同意しかない。

 

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(イタリアンの料理長がサクッとつくってくれた、まかないカルボナーラ。その辺のお店で食べるやつより俄然おいしい)

 

お盆も終わり、台風明けなこともあってお客さんは少なかった。ランチ休憩を終えてから4時間くらいの間、お客さんは1組しかこなかった気がする。

 

「やることないと逆にツライでしょ」とパートさんがいろいろと仕事をふってくれ、「お客さんいない間に座っときなさい」とイスを用意してくれ、「アイスあるよ!コーヒーも飲んでいいよ!」と料理長さんが冷凍庫をあけてくれ、くれくれ尽くしで怒涛の親切。「夜食にどうぞ」と、いつの間にか五穀米おにぎりまで握ってくれていた。こころがホクホクと満たされる職場だ。

 

お客さんの中にも、少しずつだけど顔見知りの方が増えていく。あるおじさんは、わたしが京都在住だと知ると「御所にある『一番星』っていうラーメン屋行ってみて!!おいしいよ!!!」とものすごく勧められた。行ってみようと思う。

 

tabelog.com

 

 

8月25日(土)

村では、土曜の9時半から「土曜朝市」が開催される。

「開始5分前くらいから来たら面白い光景が見れます」と聞いていたので、開始10分前から市場の前でスタンバイ。

 

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市場の前に、わらわらと村民の皆さんがやってくる。

 

村内では、普段このようにたくさんの人が集まる場面を見ることがない。村で知り合ったお姉さんに「めちゃ人来ますね」と言ったら「いや、でも今日これ少ないほうですね……なんでだろう……」とおっしゃっていた。

 

面白い光景=村民がめっちゃ集まって朝市開始とともに中になだれ込む様子、らしい。

この日はいつもより少なかったそうで、面白さレベル的には半笑いくらいだったようなので、また来週も見にきてみる。

 

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(とはいえ、この日もすごい勢いで野菜が売れていった)

 

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わたしもゴーヤとかぼちゃとブルーベリーをお買い上げ。

このブルーベリーは、バイト先のパートさんがご自宅で作っているものだ。バイトのときにおすそ分けしてもらうこともあり、下北山村に来てからめちゃくちゃアントシアニンを摂取している気がする。視力が良くなればいいのに。(裸眼 右0.2 左0.3)

 

宿舎で少し休んだあと、今日もレストランに出勤。

空き時間に『きなりの湯』館長から「よかったら、施設のFacebookページで発信をしてみてくれませんか??」とお話をもらった。もともとの仕事に近い業務内容で力になれることが嬉しく、快諾させていただく。

 

「発信できるようなことが少ないかもしれませんが」と館長はおっしゃっていたけど、発信できるようなことは、マジで、ガチで、めちゃくちゃある。

 

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村の特産品野菜「春まな」を使ったおいしいうどんに素麺にスイーツ、香りのよいお茶、花粉症に効果てきめんな柑橘「じゃばら」の調味料やジュース、美人の湯、イタリアンシェフがつくるこだわりのレストランメニュー(なお最高に美味い)

村民の方がつくる各商品のパッケージもかわいい。

わたしには宝(発信ネタ)の宝庫である。ウキウキしながらFacebookページ用の写真を館内でぱしゃぱしゃ撮って回った。

 

この日初めてパートさんとLINE交換をする。嬉しくてムズムズした。

 

 

8月26日(日)

バイトのときに、見知らぬ男性から「もしかして、トライアルステイの方ですか?」と声をかけていただく。わざわざ会いに来てくださったそうで、ご挨拶させてもらった。

その男性は、大越元さんという方で、わたしの大好きな求人サイト「日本仕事百貨」でライターをされていたらしい。今は、紀伊半島の暮らし方・働き方・過ごし方を紹介するローカルメディア「kii」を運営されている。

 

バイトを終えて宿舎に戻り、kiiの記事をゆっくり拝読する。

そして、和歌山県海南市のトライアルステイ案件を見つける。

 

【和歌山にて季節労働!FROMFARMプレゼンツの「農柑援農」/ 和歌山県海南市下津町】

 

ミカンを狩ってみたくなった。

どうしようかな、応募しようかな。

 

以前からわたしは「全国に顔見知りのバイト先を作りたい」と友人に公言していた。各地の知り合いの元で、季節労働、お店の手伝い、その他お互いのニーズが一致する形(ライターの仕事には一切こだわらない)で働かせてもらいながらその地で暮らす。

そんな場所をどんどん増やしていきたいと思っているし、下北山村トライアルステイに参加した動機にもその下心は含まれている。

 

期間が終わったあとも、なんらかの形で関わり続けたい。ふんわりとそんな気持ちが湧くほどには、すでにこの村をけっこう好きになっている。

 

 

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