真崎です

沖縄にいます

「俺は、本当はただ人と繋がりたいんです」 ~金づるでも目標達成の手段でもなく、人は繋がるために存在していると思っています~

 

 

新大阪。

 

とあるセミナールーム。

 

 

前で話しているのは、大学4年生から5年生の終わりまでずっと一緒に定期開催のセミナー運営をしてきた、ちょっと顔が長めの男の子。

 

その時は、ざっくり言えば「彼の生き方」についてプレゼンテーションをしていた。

 

 

 

部屋には、2種類の人間しかいない。

 

「彼をよく知る者」と

「彼をよく知らない者」である。

 

 

彼のプレゼンを聞いている観客席で

「彼をよく知らない者」の皆さんは、たぶんその時その部屋で発生している現象に軽く引いてたかもしれないんだけど

 

 

私含め、「彼をよく知る者」の皆さん

 

彼のプレゼンを聞きながら、嗚咽の号泣中。

 

 

 

そんな私たちを尻目に

プレゼンをする彼の表情は、とても穏やか。

 

プレゼンの内容は、決して「よくあるお涙頂戴物」や「TEDのように人のこころを揺さぶる大志を語る」というものでもない。

 

あのプレゼンを初対面の人が見ても、きっと「ふーん」で終わってしまうようなものだったと思う。

 

 

 

 

彼がその時伝えたメッセージは、たった1つ。

 

 

 

 

 

「俺は、本当は、ただ人と繋がりたいんです」

 

 

 

 

たった、これだけだった。

 

 

 

 

 

************

 

 

 

「夢という言葉が嫌い」

 

そんな私が「夢」と名前がつく夢関連のセミナー運営に携わることになったのは、ひとえに誘ってくれた女代表と運営する仲間が好きだったから。

 

 

大学4年生の終わり、その仲間たちの卒業と同時に運営メンバーが2代目に引き継がれた。めでたく5年生になった私だけ「2年目の重鎮です」という顔をして運営側に残った。

 

 

面長の彼は、2代目代表。

 

人懐っこくて、ノリと勢いがあって、教育に対する想いがあって、どちらかといえば優秀な感じで、前に出てリーダーをしてそうなタイプのその彼。そのセミナーの開催趣旨にも大いに共感していたそんな彼が代表となることに、違和感のかけらもなかった。

 

 

 

起きたことは、メンバー同士の衝突。

 

そして離別。

 

 

 

最初の方は和気藹々と楽しく企画・運営していた。

 

しかし、毎月開催と増えていく集客目標にメンバーのこころがどんどん摩耗していく。

 

 

彼も含め、余裕がなくなった。

 

余裕がなくなると、人は他者に対して否定的・攻撃的になるということをこの時学んだ。

 

 

完全な「ボス型マネジメント」で、彼は彼の思う通りに会を動かそうとし、そこに合わない言動のあるメンバーに対して威圧的な態度を向けるようになった。

 

私はそんな彼に最も噛みついていたメンバー。

リーダーのあんたがそんなんでどうすんの、もっとメンバーのこころを尊重しろやと、彼を否定し彼のこころを大いに尊重しない関わりを繰り返していた。

 

今思えば、リーダーとして彼が抱えていたプレッシャーは半端なものではなかったはず。申し訳ないことをしたと思っている。

 

 

 

結果的に、ひとりが離れた。

 

私が巻き込んだ、大学の後輩だった。

 

 

そして、そのセミナーに情熱がなくなってしまった私も、とても無責任な形で同じく運営メンバーを辞めることになった。

気まずくて、当時のメンバーに合わせる顔がなくなった。

 

 

 

 

 

彼が地方で働くことになった。

 

そんな状況だったので、その事実を知ったのは風の噂によるものだったと思う。

 

 

尊敬している人から紹介を受けた人材ベンチャー企業で、バリバリのコアメンバーとして就活系イベントの企画運営や営業などを頑張っている様子だった彼。

教育に想いがあり、勢いのある彼にはぴったりの環境だったように思われた。

 

そんな様子を、私はfacebookフィードから見つめていた。

正直そこに対して特になにも気に留めてもおらず、当時は彼に対する関心がとても薄かったんだと思っている。

 

 

 

そんな彼が、突如目の前に現れた。

 

 

私が新卒で入社した会社の、大学生向けキャリア支援プログラム。 

大阪特別開催編。 

私が入社したての4月の話。

 

 

 

え、なんでいますのん。

 

 

率直に思った。

というか言った。

 

 

その時彼がどんな返答をしてくれたか正直覚えていないけど、へらりへらりと笑いながら「人生迷子」的な状況になっているようなことを話してくれた気がする。

 

どうやら彼は、少し前にその地方の会社を離れたらしかった。

 

 

感覚的だが、彼は精神的に衰弱していた。

 

かつての勢いやどこか尖ったエネルギーがなんだかどこか衰退していて、「自分と向き合ってここれからの人生を描いていく」ようなこの講座に参加して大丈夫なのかと心配になるくらいのエネルギー値。

 

 

 

講座が始まってから

彼は大いにもやもや苦しんでいた。

 

 

眉間にシワを寄せた固い表情は

まるであのセミナー運営のときの、焦りと他者否定的態度を彷彿させる。

その態度を自分に向けていたのかと思う。

 

 

1日目は、とことん過去と向き合った。

 

 

 

 

2日目に、プレゼンテーションをした。

 

自分と向き合い、自分がいま思っている素直な想いをみんなの前で話すというもの。

 

 

私の繋がり界隈では、このようなプレゼンテーションをひと通り何度も行ってきている人たちがたくさんおり、彼も例外なくそのひとり。

 

 

私が知っている彼のプレゼンは

 

「本気で自分の道を生きる!!」

「教育で世の中を良くする!!」

 

いつ見てもそのメッセージ。

 

 

たぶん本気のプレゼンだったと思う。

強くて尖ったエネルギーで、いつも肩と身体にグッと力を込めて大きな声でプレゼンしていたから。挙げ足を取るなら「自然体ではない」プレゼン。

 

 

「もう俺はここなんだ」

そんな確信を持っている、且つ言い聞かせているように、私に感じさせていた。

 

 

 

 

前に立つ彼から、その「強くて尖ったエネルギー」を感じなかった。

 

 

なにを言うんだろう。

誰にもまったく想像がつかない。

 

 

 

 

 

そして、プレゼンが始まった。

 

 

 

 

 

 

************

 

 

 

 

しんどかった、と彼は言った。

 

 

地方に行って仕事をバリバリとして。

やりがいも楽しさも確かにあったけど。

 

 

みんなが俺から離れていくのを感じていた。

 

とても悲しかった、と言っていた。

 

 

学生時代のセミナーと一緒。

会社のセミナーにも人を集客しなきゃいけない。

数値的な集客・売上目標もある。

 

 

友達にたくさん声をかけた。

このセミナーに参加しないかと。

 

 

その人のことを思って、じゃない。

 

自分の目標を達成しなければいけないから、声をかけた。

 

 

 

正直、友達の顔が「¥」に見えた。

 

 

 

そしたら、人が離れた。

 

繋がりが薄くなっていくのが分かった。

 

 

俺はなにをしているんだと思った。

俺はなにをしたいんだと思った。

 

 

 

 

 

 

プレゼンの大筋は

こんな形から始まったと思う。

 

 

内容は覚えているけど、一言一句彼の言葉を覚えているわけではないので、ところどころ私の言葉での表現に変わってしまっているけれど

 

 

 

1つだけ、爆発的に印象に残った言葉。

 

 

 

 

「友達の顔が「¥」に見えた」

 

 

 

 

 

*************

 

 

「真崎、この講座受けない?」

 

 

 

ある人から電話がかかってきた。

 

 

約20万円の講座参加のお誘い。

 

その人自身は、その企業の人ではない。

なんでその人がかけてきたのか分からない。

 

 

 

「突然どうしたんですか?」と聞く。

 

 

明日までにあと1人契約が取れると、その人にとって身近な大切な人が営業成績優秀者として会社で表彰される

 

ということをそのまま伝えられた。

 

 

 

 

 

受けません、と言った。

 

 

 

受けるものか、と思った。

 

 

 

 

 

 

同じ歳の友人たちが社会人になっていった時、ひとり大学生を延長していた私は、どこかで軽い人間不信に陥っていた。

 

 

友人たちの口から

共通の友人たちの名前が挙げられ

 

「~~からなんか営業かけられてるっぽい」

 

という話を、いろんなところで聞いたから。

 

 

「あいつ絶対「私のため」ってより「数字のため」って感じやわ笑」

 

という悲しい笑いを、何度も聞いたから。

 

 

そしてさっきの話のように

 

私自身「誰かの目標達成のために」商品を買わないかと言われたことがあったから。

 

 

 

友達から「営業かけてきた」と聞いていた友人から「電話で話したい」と言われたとき、絶賛疑心暗鬼だったわたしは、その相手に対してこう言った。

 

 

「私に、商品売りたいんやろ?」

 

 

 

 

相手がその時なにを思ったのかは、知らない。

 

 

 

「違うよ。」

 

 

とだけ言われた。

 

 

 

 

*************

 

 

私は焦っていた。

 

 

 

上記で書いた、新卒で入った会社の大阪開催のプログラムに人を集めなければならない。

 

社長からノルマを課せられたわけでもプレッシャーをかけられていたわけでもない。

 

 

ただただ

尊敬していた社長に、認められたかった。

 

「こんなに集められてすごいね」

って言ってほしかった。

 

 

社長に「私ひとりで講座の大阪説明会を開催してもいいですか」と提案した。

快諾をいただいた。

 

facebookで告知ページをつくって拡散したら

ひとりだけ、私の仲の良かった後輩が参加してくれた。

 

彼女の参加表明のコメントには

「真崎に会いたいから行きます」

と書いていた。

 

 

 

 

説明会後

 

家に帰ってから、彼女は大泣きしたと言った。

 

 

 

「私を思って話してくれたのはとても嬉しかったけど、よく分からないけどとても悲しかったです。」

 

そう言っていた。

 

 

「よく分からない」から分からないけど

多分、感受性豊かすぎる彼女には伝わったのだと思う。

 

 

わたしが「誰の方を向いて」話していたのか

 

ということ。

 

 

 

その時彼女は就活に悩んでいたので、自分を見つめるプログラムに参加することで、いかに自分への理解が深まり、自分への自信がつき、就活に対しても強い意志で臨めるようになるのかということを

 

私の方から一方的に話していた、気がする。

 

その話を聞く彼女の顔も声も、まったく思い出せない。

 

 

 

彼女のことを全く思っていなかったわけじゃない。

 

ただ、本気で彼女のために話していたわけでもない。

 

 

 

わたしは、彼女の向こうにある

「社長からの評価・賞賛」を見ていた。

 

 

 

彼女を傷つけたことに、なぜか自分がショックを受けた。

 

わたしの盲目になったこころが、いつの間にか彼女のこころを排除していた。

 

 

 

お金のため

数字のため

目標達成のため

社会的・世間的評価のため

誰かから認められるため

 

の、言動。

 

 

それは、相手に伝わるらしかった。

 

たとえ、どんなに素敵でそれっぽい言葉でごまかそうとも。

 

 

 

 

それを自分がされた時

私は悲しかった。

 

 

それを自分がした時でさえ、

なぜか私が悲しくなった。

 

 

 

 

そこに、純粋な繋がりはない

 

そう感じた。

 

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

彼のプレゼンは、続く。

 

 

先ほどの地方務めの話に重ね

時を同じくして

彼は身近にいた存在をなくしていた

 

そんな話になっていた

 

 

 

 

 

 

身近だけど離れていた

そんな存在だった相手の最後を、最初に見つけたのが俺だった

 

 

その最後を迎えたのは

少し前らしかった。

 

 

「この人は、独りで最後を迎えたんだ」

 

そう思った。

 

 

 

 

遺品に携帯があった。

 

携帯を見た。

 

 

 

いい年した中年が、絵文字たっぷりの気色悪いメール文面を、ある人に向けて作成していた。

 

 

 

 

それを見て

 

俺のこと、すごい愛しているのが分かった。

 

 

 

すごい愛してくれていて

 

だからすごい寂しくて

 

 

この人、俺たちとすごい繋がっていたかったんやなって分かった。

 

 

 

 

 

その人の存在を感じて思った。

 

 

俺も、

 

本当はただ人と繋がっていたいだけなんや

 

 

 

 

 

 

「人と繋がりたいんです」

 

「人が好きなんです」

 

「みんなが大好きなんです」

 

「人を大事にしたいんです」

 

 

志もかっこいいものも構成もクソもなく

シンプルで何度も同じ言葉を連呼したプレゼン。

 

 

今までで、一番伝わった。

 

こころの底から涙が溢れて止まらなくなった。

 

 

 

 

 

 

  

あれから3年。

 

 

彼は大好きな人と繋がって、結婚。

 

補足すれば、わりと幸せそうに生きている。