「なぜ、真崎はモテないのか」
2年前まで友人界隈サークル会社とあらゆる所属コミュニティで語り尽くされてきたこの議題。
で、この議論の着地点はいつだって
・実は真崎が彼氏を求めてない
・真崎に女としての自信がなさすぎる
・真崎に色気がなさすぎる
の3連コンボになりました。
大学時代に好きな先輩の家に泊まって朝までふたりで寝ころびながら夢中で話してついに明け方、先輩がキラキラした顔で「一緒にいてこんなにムラムラしない女は真崎が初めてだよ!」と言ったその晩わたしは泣いた。
以降、会社員を辞めるまでの数年間とにかく指摘され続けてきた「真崎に色気がない」問題。
そしてやっぱり自信もない。
会社員時代はそもそも仕事仕事で恋愛どころじゃなく、うっかりわたしを好きになって告白してくれた人たちには恐縮ながらなぜか生理的嫌悪感が湧いてしまう。
なぜどうしてよオヨヨヨヨと悩み暮れるわたしに友人は「真崎に女性としての自信がなさすぎるから『こんな自分を好きになるなんておかしいし気持ち悪い』と思っちゃうのかも」と言った。ナルホドそういうものなのか。
そんなわたしのカラカラな自尊心と色気。
満たすきっかけは朝キャバでした。
2年前の4月に会社を辞めてフリーライターになった。
そして副業として始めたのが朝キャバのバイト。
キャバ歴も色気も男性経験すらもゼロだった。
一方「長時間働きたくないし昼夜バイトしたくないしバイトするなら記事ネタになりそうな仕事以外したくない」とこちらもナイナイ尽くしでやる気ゼロの消去法から朝キャバを勤務先に選んだ。
この朝キャバのママがまた極上に美人でな。
わたしが入店した当初のママは齢32の初期妊婦。
金色の長い髪をシンプルなポニーテールにした釣り目ネコ顔のキツめな美人が「今日もお客さん少なすぎだよ店潰れる!笑」と体験入店中のわたしにニヤッと笑いかけた。ドキっとした。ドモった。
ママはかつての池袋朝昼キャバの女王。
所属店で長くNo.1の座につき、現役を退いてママ兼社長になってからもママ目的のお客さんが続々来店した。池袋のキャバクラ界隈で知らない人はいない程の有名人だったらしい。
女のわたしですらまともに目も合わせられねぇ。
とにかくオーラがすごい人だった。
本入店が決まって週4出勤の日々が始まる。
待機室でドギマギしながら過ごして、ボーイに呼ばれてはオドオドと接客につく。
(うお~~~どうしよう苦手なタイプの人だ~~~~若くて可愛くてテンション高いのが好きな人だパリピだムリだ逃げてぇぇ~~~~しかし楽しませなければそしてドリンクも頼んでいただかねばぁぁぁぁぁぁしかし怖いムリだぁぁぁぁぁぁぁ)
邪念だらけでぎこちないワテ。
お客さんとも微妙な雰囲気。
「あー!前に来てくれたよね!」
そこに、颯爽とヘルプにくるのがママ。
ナチュラルモーションでお客さんの隣に座り、話し、ときにタッチしながらよく笑う。
「ねぇビール頼んじゃうね」
わたしが心の中で5億回深呼吸しないとトライできない最難関「ドリンクを頼む」だってさらりと超えてくる。キャリアが違うとはいえなんだこの色気と自信と接客スキルとオーラの差。
ママとは普段話すことも少なかったし遠い存在だった。
でもママが同じテーブルについた日には、接客後の空き時間にちょこちょこと悩みや相談を聞いてもらっていた。
「ドリンク頼むの苦手なんっス…」
「さっきの人楽しませられなかったっス…」
「今日のお客さんにいきなり『お前の色気はマイナス40点』って言われたんっス…」
「あと…その人に……「お前ピーマンみたいだな」って言われて………
「真崎ぃ!自信なさそうにしてたらダメだよ!お客さんにはこっちの自信がどうとか関係ないからね!」
ドビチーン!
その通りすぎてぐぅの音も出ねぇ。
「真崎は、たしかに色気がないね」
ドビチン
「マイナス40点って言われるのも分かる」
ドビチン
「でも大丈夫どうにかなるよ」
ドビ?
と、その後ママが都度教えてくれた「色気の醸し方」
それは高度な接客スキルでもなんでもなく、かつ日常でも応用できそうな「日々の心がけ」だった。
6つほど書いていきますので、どこかの自己肯定感低めな誰かの参考にでもなれば幸いです。
1. 姿勢を正す
"背もたれに絶対もたれない"
"脚は組まずに両膝はできるだけつける"
「接客中はこれ絶対守ってもらうけど、待機室にいるときから姿勢は常に正しておいたほうがいいよ」
確かに色気のある人って姿勢がキレイ。
猫背の売れっ子に出会ったことがない。
そういや「歴代かるたクイーンはみんな姿勢がキレイだったわ」とも聞いた。ちはやふるの話です。
背中を伸ばし、へそに力を入れ、足を閉じる。
これだけはどこにいてもできる限り意識した。
以来、色気やオーラはともかく「姿勢がマジでキレイだね」と各所で褒められるようになりましたやったね。
2. 自分に合うサイズの服を着る
「真崎、なんか服のサイズ合ってなくない?」
はいドビチン。すみません。
お店のユニフォームは白のカッターシャツに黒のタイトミニ。
カッターシャツを持っていなかったわたしは同居人の男物シャツをもらって着用していた。よってデカい。
昔から兄ふたりのおさがり服を好んで着ていて、大きめサイズには抵抗がなかった。
「ぶかぶかの服じゃ色気出ないよ!胸があるんだからまだキツいほうがマシ!サイズの合う服選びな!」
買った。レディースMサイズ。
Fカップにはキツく胸元が軽くはち切れそうだったけど、それはそれでウケ良し。
そして以降、男物を着るのは止めました。
3. 自分に合うカワイイ下着をつける
「真崎、ちょっとブラ見せて」
チラッ
「ちょっとウソこれはダメでしょwwww」
ママがダメ出し爆笑。
その日つけていたのはベージュの柄なしブラ。
当時からさらに3年前の就活時に「シャツから透けない!」と買ったもので、使い勝手が良かったためわりと愛用していた。
使い込まれた末にブラひもはねじねじ。
「これがお客さんが見たら萎えるわ!!」だってさ。
「下着屋さん行ってちゃんとサイズ測ってもらいな!安物じゃなくてちゃんとしたやつ買いな!あと無地ベージュとかダメ!カワイイのにしな!」
買った。ピンクのと黄色っぽいの。
初めて下着屋さんで1万円以上の買い物した。
下着を変えて、いちばん変わったのは気分。
見えない部分だし見せる機会もないからとあまり重視してなかったけど、かわいい下着をつけていたらそれだけでテンション爆上がるんだねビビった。
4. できればTバッグをつける
「Tバッグはいいよ、おしりの形がキレイになる」
ママごり押し。
これだけは今でも実践できていません。
5. 唇をぷるぷるにしておく
「唇がカサカサしてると色気ないよ!」
さわる。カサカサした。マジかよ。
元々リップケアなどあまり意識してこなかった。
冬は乾燥してひび割れることもあるのでリップを塗っておくけど、キャバ勤務時は春夏。たぶん当時なにもつけてなかった。
「唇はセクシャルポイントだからね。唇がキレイでぷるぷるしてるだけで武器になるよ」
グロスを買った。
できるだけマメにリップクリームを塗るようになった。
特に褒められたことはないけどこれまた気分はいい。
6. 「すみません」より「ありがとう」
「真崎、お客さんにドリンクもらったとき『すいません』って言ってるときがあるから気をつけな」
うっそー気付かなかった。
でも確かに言ってそう。
当時は「自分なんかが人にお金を使ってもらったり奢ってもらったりするのが申し訳ない」と思っていた。奢られると「ううすみません」と謝ることもあった。 奢られる度にものすごいエネルギーを消費した。
その精神状態が、接客でもモロに出てたっぽい。
「そういう時は『ありがとう』だよ。お客さんも女の子の申し訳なさそうな顔見たいわけじゃないんだよ。喜ばせたくて自分で好きでお金使ってんの。なのにこっちが謝ったら酒がマズくなるよ!」
ドッビチーン。
マジか謝っていいこと何もなかった。
人の好意を「申し訳ない」と思ってしまう思考を変えるのは容易じゃなかったけど、それからはもうハチャメチャに意識した。笑顔で「嬉しいありがとう」を言うようにした。
そして知った。
相手のために、相手を喜ばせたくてお金と時間を使い、結果相手が喜んでくれることは、当人にとってもわりと嬉しいことらしい。
気付いてからは「ありがとう」がラクになった。
そしてわたしは、今やこの店のNo.1キャストとなり、今日も大いなる色気でお客さんたちを虜にしている
ワケもなく、勤務から5ヵ月でお店はつぶれてわたしは専業ライターとなりました。ちゃんちゃん。
でもねママ。
朝キャバ経験とママアドバイスのおかげでわたしちょっと自信(と希望的観測で色気)が持てるようになったよ。
奢ってもらったら「ありがとう」と言えるよ。
デートに誘われたら「嬉しい」と思えるよ。
好きになってくれる人がいたら「オイオイ見る目あるなお主」とうぬぼれるようになったよ。
この調子で、アタイ自信もって幸せになるね。
ママ、あの時はありがとう。
追伸:しかしTバックのハードルは高い
真崎
***************
Twitterのフォローうれしいです
Instagramのフォローうれしいです
お仕事(ライティング)の依頼やブログ感想
私に絡んでくださる方はこちらから