「みんなが結婚するから私も結婚しなきゃ」
そんな他者比較から慌てて婚活を始めるアラサーアラフォーに苦言を呈する文章をよく見かける。他人がどうこうに関係なく「自分がどうしたいのか」と真摯に向き合えよってやつ。
そうなの、まさにその通りなの。
ところでわたしは結婚したい。
だってみんなが結婚するからです。
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先日、池袋に行ってきた。
1年半前まで住んでいたシェアハウスが解散することになったのだ。
大学時代からずっと仲の良い女。
ひたすらノリの合う男。
他の住人も愉快で気の合うメンバーばかり。
そのシェアハウスでは、「他人との共同生活」という緊張感をほんの少しだけ残しつつ、家族以上に家族な居心地のよさを感じながら暮らしていた。
冬になると、正方形の小さなホットカーペットに5人がギュっと固まる。
そして、フニャフニャと当て所もない会話をする。
「あったかい」
「居心地ええな」
「なんかさ」
「うん」
「わたし、あんま彼氏いらんかも」
「分かる」
その頃はみんなで「はぁ~彼氏ほし~」と口癖のように言っていた時期。
たまに奮い立って合コンに行ったりしては、仲良くなった人と2~3回会ってそのまま終わる、みたいなことを繰り返していた。
「この家におったらさ」
「うん」
「寂しくないから彼氏いらんってなる」
「分かる、それちょっとヤバいよな」
「ヤバいけど抜けられへんよな」
「一生結婚できひんやん」
「え、いま彼氏彼女おる人??」
「………」
「ちょwwやばい全員フリーかよwwwww」
「そしたらみんな一生ここで暮らそwww」
「いやホンマそうしよwwww」
そうケラケラ笑いながらダラダラ夜更けまで話す。
とても楽しい日々だった。
この家なら、このメンバーなら。
ずっと一生いっしょに暮らすのも楽しいかもしれない。
そんなことを思いながら、ふらっと沖縄移住して自ら出て行ったのだけど。
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解散パーティ当日。
10畳のリビングには、現住人の5人、元住人のわたし、よく遊びに来る友人たち、そして男性メンバーの彼女がいる。
「シェアハウス出た後どうするん」
ピザを齧りながら、メンバーの一人に聞いた。
「ん~彼氏と同棲する」
「マジか」
「たぶんその人と結婚するわ」
「マジか」
「そっちは??」
メンバーの男友達にも聞いた。
「俺は、もう入籍すんで」
「マジか」
「だから一緒に暮らす」
「マジか」
んふふ、と彼女がかわいく笑う。
お前、ホンマいい子捕まえたな。
そうか、そうよな。
そら、みんな結婚していくわな。
結婚したいって言ってたもんな。
言うてうちら28歳やもんな。
そこそこ好き勝手したし次行きたいよな。
”そしたらみんな一生ここで暮らそ”
”いやホンマそうしよ”
そんなこと言って笑いながらも、この空間が一時的なものやって、全員分かってたもんな。
ひとり暮らしができなくなった。
前は平気だった。
でもできなくなった。
シェアハウスを経験してからできなくなった。
たった2ヶ月だけ住んだ高知のマンションも、つい先日解約してしまった。
寂しすぎたのだ。
ひとりで暮らすのが、本当に寂しい。
ただ「寂しい」というだけの感情が、わたしには泣けるほどに苦しかった。
わたしの暮らしに「他人」がほしい。
言葉を交わして笑って過ごせる「他人」がほしい。
でも、誰でもいいわけじゃない。
沖縄で3つのシェアハウスに住んで分かった。
ただ「他人」なだけではダメらしい。
慣れもあるけど、そもそもの波長があるらしい。
波長が合う人とじゃないと、落ち着いて同じ空間にはいられないらしい。
池袋のシェアハウスは、波長が合っていたらしい。
じゃあ、そんなシェアハウスを探せばいい。
ひとりで暮らしたくないなら、そんなシェアハウスを探してまた住めばいい。
”彼氏と同棲する”
”たぶんその人と結婚するわ”
”俺は、もう入籍すんで”
でも、みんな結婚していった。
若者が集まるシェアハウス。
そこには思っているよりずっと短い消費期限がある。
池袋のシェアハウスは、メンバーの結婚・婚約とともに期限を迎えた。
結婚でなくても、転職、移住、世界一周。
メンバーのあらゆるステージ変化に合わせて、シェアハウスは簡単に形を変え、最後には消滅する。
「寂しがり屋すぎてもう二度とひとり暮らしをするつもりはないし、かといってあまり知らない人達とのシェアハウスは気疲れするし、家族以外のこころ許せる他人と共同生活したい」をとりあえず5文字にまとめて「結婚したい」と言ってる
— 真崎 (@masaki_desuyo_) 2018年1月28日
住む場所を変え、場の形態を変え。
たくさん体験してたくさん思考した。
「自分はどうやって生きていきたいか」
経験と感情に照らしながら、何度も自問した。
そして、こう思うようになった。
ひとりは寂しい。
こころ許せる他人といっしょに暮らしたい。
その手段として、「結婚」が一番分かりやすい。
だって、みんな結婚していくんだもん。
だから、わたしは結婚したい。
今はそんなお気持ちです。
真崎
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