真崎です

沖縄にいます

心霊現象のおかげで震える夜を過ごした話、聞いとく?

 

北中城村の部屋にたどり着いたのは午前2時。

家主も寝てしまい家の中は真っ暗だった。

 

1日中仕事をしたのちお酒も飲んだその日は上機嫌かつ疲労困憊。2階の寝室まで上がることさえ億劫だった私は、キッチンスペースにある椅子を3つ並べて簡易の寝床をつくって倒れこんだ。

 

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「1人で住むのめっちゃ怖かってんで。金縛りには遭うし、2階やのに窓の外に黒い影映るし、風吹いてないのにドアがバァァンって閉まる音するし」

 

家主である友人が話していた。

 

6月に今の家に越してきた家主は、シェアメイト2名が入ってくるまで約3週間ほど一人暮らしをする予定だった。しかし一人で住むにはだだっ広いうえに上記の心霊現象である。怖すぎ。私むり。

 

ちょうど那覇で数件の内見を終えて「那覇には住まんなあ」と思ったばかりの家なき子だった私に「シェアメイト来るまで泊まっていいよ」と家主が声をかけてくれたので、お言葉に甘えて2週間半の山村ホームステイを始めた。

 

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家はまじでデカかった。

たまげた。

 

家族単位でシェアハウスできるレベルの広さ。大きな庭とベランダもついて、ベランダからは海が見下ろせる。さらにこの家の家賃が恵比寿の1LDKと大して変わらないんだからすごいよ北中城村。やったね北中城村

 

一瞬で部屋が気に入った。確かに広くて静かで夜は外も真っ暗で怖いっちゃ怖いけど、その恐怖心をはるかに凌ぐレベルで気に入った。

 

そもそも私は心霊的サムシングとは無縁の26年間を送っている。「20歳までに1度も霊を見なかった人はその後ずっと霊を見ることはない」という話も都合よく心の底から信じている。

 

今更、私の身の上に心霊現象など起きはしないだろう。いつの間にかそう思い込んでいたかつての私の頭を花瓶でかち割りたい。

 

あの日の話に戻る。

 

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簡易の寝床でゴロゴロしていたら、酔いとともに眠気が覚めてしまった。徐々にハッキリしてくる意識。そして高性能かつ空気の読めない私の脳は、あの日の家主の言葉を高音質でリピート再生し始めた。

 

「1人で住むのめっちゃ怖かってんで。金縛りには遭うし、2階やのに窓の外に黒い影映るし、風吹いてないのにドアがバァァンって閉まる音するし」

 

……眠れねえ。

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ、ガチャガチャ

 

玄関のほうから音がした。

 

この音は聞いたことがある。

ドアノブを回す音だ。

 

午前3時半。こんな時間に村の中を歩き回って勝手に民家のドアを開けようとする人が……いたら確実にヤバイ奴やん。

 

慌てて立ち上がり、玄関の施錠を確認した。カギは閉まっている。良かった。万が一閉め忘れていたら、そう思うと体が震えた。

 

 

イヤな気配と予感がした。

 

台所にあった裏口をバッと見た。

 

 

 

ガチャ、トントン、ガチャガチャ

 

 

やばい。

 

やばいやばいやばいやばいやばいやばい。

これいよいよなんかやばい。

絶対外にやばい人おるやん。

 

めっちゃ裏口ガチャガチャされてる。なんならちょっとノックしてる。え、開けると思う?この状況で開ける人がいると思ってはる?

 

スマホを握りしめて台所の電気を消し、振り返ることなくダッシュで2階に上がった。

 

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恐ろしい不審者の訪問を予感していた私は、ガタガタと震えながら2階に駆け上がって広いスペースに倒れこんだ。

 

電気をつけてしまうと位置がバレてしまう。そう思って部屋は真っ暗なままにしておいた。だだっ広いスペース、景色も見えないほど真っ暗な窓の外、そして家の中。10畳をゆうに超える何もないスペースの真ん中に寝転んで身を縮めた。

 

寝たい。

寝たい寝たい寝たい寝たい寝たい寝たい寝たい。

というかいつの間にか意識を失った末に気付けば朝だったみたいな展開をください。

 

 

カチャ……

スッ……

ガタッ……

 

ビクウッ

 

微かな物音にも敏感になり、階下で音がするたびにガタガタ震える手でスマホのライトを点けて階段をのぞきに行った。未だに当時の自分の行動が理解不能

 

寝室には家主が寝ている。ひとりで寝ているときは部屋に鍵をかけている。大正解だよ家主。これであんたはセーフティゾーンだよ。

 

 

ここで気付いた。

 

なんで私わざわざ開放感溢れる広いスペースにいるの?

 

私の荷物を置いた空き部屋に転がり込んだ。震える手で鍵を閉めた。暗闇に耐え切れず電気をつけた。床に倒れこんだ。最小音量でポップな音楽をかけて気を紛らわした。

 

 

午前4時。

 

ドッドッドッとダイレクトに聞こえてきた心臓の音が落ち着いてきた。体の震えも収まった。音楽のおかげで微かな物音は聞えなくなった。

 

良かった。

あと1時間もすればきっと空も明るくなるだろう。

 

充電が切れて音楽が止まった。

充電器は階下に置いてきてしまった。不覚。

まあ無音は怖いけどもう大丈夫だろう。

 

寝よう。

 

そう思って、目を閉じた。

 

 

 

 

 

バアァァァン

 

 

今までで一番大きな音がした。

 

この音は聞いたことがある。

玄関のドアが勢いよく閉まる音だ。

 

 

入ってきた……?

 

え、入ってきた……?

 

 

入ってきちゃった入ってきちゃった入ってきちゃった入ってきちゃった入ってきちゃった入ってきちゃった入ってきちゃった入ってきちゃった入ってきちゃった入ってきちゃったどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしょうどうしよう

 

体がすごい勢いで震え出した。

 

そしてこれはもう感覚的すぎて説明できないのだけど「これは不審者じゃない」と自分の直感がそう訴えていた。不審者というか「これは生きている人の仕業じゃない」が正しい。

 

目をつむるのが怖くてカッと見開いたまま天井を見上げていた。

 

手で耳をふさいだ。

それでもガンッやカタカタッと微かに音が聞こえてくるので、耳を高速でふさいだり閉じたりした。

 

自分の声で物音をごまかすために小さな震える声で歌もうたった。ブルーハーツの『青空』を選曲した。

 

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私のこの姿もなかなかの地獄絵図だったと思う。

 

 

極限の精神状態で歌をうたいながら、どのくらい時間が経ったんのだろう。

 

ようやく空が明るくなり始めた。

 

部屋に微かな光が差した瞬間、体中の力が一気に抜けた。手も耳から離した。歌うのも辞めた。空が明るくなると、不思議と物音に対する恐怖心がなくなった。

 

 

そして、夢にまで見た、気絶の瞬間がきた。

 

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目が覚めたのは、朝の8時。

 

 

階下に下りても、特に変わった様子はなかった。人が入った様子も、荒らされた様子も、なんらかの気配も。

 

 

家主に昨夜の一部始終を話した。

 

彼女は爆笑していた。

「真崎ほんまウケるwww耳ふさぎながら歌ってたやつ動画撮りたかったwwww」と壊れたように笑っていた。

 

彼女は霊感が強く、心霊現象に遭遇した経験も数知れない。「アッチは人の恐怖心に反応して出てくるから怖がったらアカンで。言うても物音立てたり影見せてきたりするだけやし大丈夫やって」と言った。心強い。

 

お世話になっている家は自宅兼クリスチャンの集まる教会でもある。教会は悪霊に襲われやすいそう。悪魔が人々の信仰をジャマしたいらしい。

 

早く、家を、探そう。 

 

 

 

このブログを書いている間に家主が出かけた。

夕方に家を出てまだ帰ってこない。

 

空が、暗くなってきた。

部屋が、暗くなってきた。

 

怖くなんかない。

 

怖くなんか、ない。

 

 

真崎

  

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